全期間PFが良く見えると、その数字だけで安心したくなります。ですが、同じ検証でも年ごとに切って見ると、勝ちやすい年と苦しい年がかなり混ざります。今回はUSDJPYのTDSから取得したM5データを6設定×11年に分け、全期間PFでは見えにくい「年ごとの顔つき」を見直しました。
先に結論
- 66戦略年の年別PFは、表示値で 0.26〜2.07 まで動きました。
- 32/66 は PF1.0未満で、毎年安定して勝てたわけではありません。
- 全期間PFが良くても、年別に分けると「どこで崩れるか」の印象は大きく変わります。
みか
全期間PFが良ければ、毎年そこそこ安定していると思っていました。年ごとにそんなに違うんですか?
たくや
合計の数字が強いなら、途中の波は平均化されている印象があります。あえて年別で見る意味が気になります。
るなまる
そこが今回の確認ポイントです。合計では目立たない崩れ方が、年別だとかなり見えることがあります。
1. 全期間PFが良くても、毎年勝てるとは限らない
PFは「利益の合計 ÷ 損失の合計」で見る指標です。1.0を上回れば利益合計が損失合計を上回り、1.0を下回れば逆です。ただし、これは「どの期間をまとめた数字か」で印象が大きく変わります。
たとえば、すごく強かった年が数年あれば、苦しかった年が混ざっていても全期間PFは見栄えがよくなります。逆に言うと、全期間PFが良いだけでは「毎年どのくらい崩れるか」は分かりません。
この記事で見たいこと
今回は「PFが高いか」より先に、年別に切ったときの揺れ幅と、PF1.0未満の年がどれだけ混ざるかを見ています。
2. 6設定×11年でPFはどれだけ変わった?
今回の観測値は 6設定×11年=66戦略年 です。その66件を並べると、表示用に丸めた年別PFは 0.26〜2.07 まで動きました。66件のうち 32件 は PF1.0未満、残り 34件 は PF1.0以上です。
つまり、年ごとに見ると「勝つ年」と「負ける年」がほぼ半々に近い形で混ざっています。全期間PFだけを見ていると、ここはかなり見落としやすい部分です。
3. 「66戦略年」は66年間という意味ではない
ここは誤解しやすい点です。66戦略年は「同じ11年間を6種類の設定で評価したので、年別PFの観測値が66件ある」という意味です。相場データが66年間あるわけではありません。
初心者向けに言い換えると、同じ教科書を6人で解いたので答案が66枚ある、というイメージです。年数そのものが66年に伸びたわけではありません。
たくや
最初は年数そのものが長い話かと思いました。観測値が66件ある、という意味なんですね。
るなまる
はい。2015年から2025年までの11年間を、6つの設定でそれぞれ年別集計した結果です。
みか
年数が長い話ではなくて、同じ期間を切り方違いで見た数なんだ、と覚えておけば混乱しにくそうです。
4. 年ごとのPFを見ると何が分かる?
年別に分けると、「どの年に複数設定が同時に苦しかったか」が見えてきます。今回の66戦略年では、2017年は6設定中5設定がPF1.0未満でした。逆に、2018年と2020年は6設定中1設定だけがPF1.0未満で、相対的に崩れにくい年でした。
もうひとつ大事なのは、真ん中の位置です。66件の中央値は 丸めていない元の集計値で 1.007990、表示では 1.01 です。つまり「極端に悪いわけではないが、毎年余裕があるとも言いにくい」という分布でした。
5. バックテスト採用前に何を確認すればいい?
年別PFを見る目的は、数字を細かく知ること自体ではありません。実際に採用する前に、次の4点をセットで確認するためです。
- PF1.0未満の年が何件あるか
- 悪い年が特定の1年だけか、複数年に散っているか
- 年ごとの取引数が少なすぎないか
- 年別PFのあとに、OOSやデータ条件の違いでも崩れないか
年別PFだけで採用を決める必要はありませんが、全期間PFだけで決めるのは早すぎます。次の確認としては、ウォークフォワード/OOS、長期データと直近データ、M1とリアルティックの3本が自然につながります。
みか
PFの数字が1つ良いだけだと、安心材料としてはまだ薄いんですね。
るなまる
はい。まず年別の散らばりを見て、そのあと別期間や別データでも崩れないかを重ねていく流れが安全です。
たくや
次のバックテストでは、PF1.0未満の年数と年ごとの取引数も一緒に控えるようにします。
6. 詳しい検証条件と年別PF
検証条件
- データ:USDJPY / TDSから取得したM5 OHLCデータ
- 期間:2015-01-01 22:00〜2025-12-31 21:55
- バー数:820,078本
- 合計取引数:5,819取引
- 集計単位:6設定×11年=66戦略年
- 欠損年、取引ゼロ年、PF算出不能年:なし
- コスト前提:固定0.5pipsを約定価格へ反映済み。ただし、変動スプレッド、滑り、手数料、約定拒否は再現していません。
6設定の大枠
- Tokyo ORB (current):東京序盤のレンジブレイクを基本にした現行設定
- 1: 2nd Entry:初回の動きのあとに再進入も評価する派生設定
- 2: Tokyo Late:東京時間の遅い時間帯まで見る派生設定
- 3: London ORB:ロンドン序盤の値動きを対象にした設定
- 4: Failed BO:ブレイク失敗後の戻りを扱う設定
- 5: NY ORB:NY序盤の値動きを対象にした設定
非丸め値を元にした主要統計です。本文前半では読みやすさを優先して丸めた値を使っています。
| 指標 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 最小PF(非丸め値) | 0.263043 | 表示では 0.26 |
| 第1四分位(非丸め値) | 0.816338 | 第1四分位 |
| 中央値(非丸め値) | 1.007990 | 表示では 1.01 |
| 平均(非丸め値) | 1.050456 | 本文前半では出していない補足値 |
| 第3四分位(非丸め値) | 1.302448 | 第3四分位 |
| 最大PF(非丸め値) | 2.073247 | 表示では 2.07 |
| PF<1.0 | 32件 | 66戦略年中 |
| PF>=1.0 | 34件 | 66戦略年中 |
年別の取引数合計です。赤字件数は6設定中で数えています。
| 年 | 取引数 | PF1.0未満の設定数 |
|---|---|---|
| 2015 | 581件 | 4/6 が PF<1.0 |
| 2016 | 603件 | 2/6 が PF<1.0 |
| 2017 | 534件 | 5/6 が PF<1.0 |
| 2018 | 488件 | 1/6 が PF<1.0 |
| 2019 | 388件 | 4/6 が PF<1.0 |
| 2020 | 429件 | 1/6 が PF<1.0 |
| 2021 | 359件 | 4/6 が PF<1.0 |
| 2022 | 591件 | 3/6 が PF<1.0 |
| 2023 | 637件 | 3/6 が PF<1.0 |
| 2024 | 596件 | 3/6 が PF<1.0 |
| 2025 | 613件 | 2/6 が PF<1.0 |
設定ごとの取引数合計です。
| 設定 | 取引数 | 大枠説明 |
|---|---|---|
| Tokyo ORB (current) | 1,625件 | 東京序盤のレンジブレイクを基本にした現行設定 |
| 1: 2nd Entry | 695件 | 初回の動きのあとに再進入も評価する派生設定 |
| 2: Tokyo Late | 945件 | 東京時間の遅い時間帯まで見る派生設定 |
| 3: London ORB | 540件 | ロンドン序盤の値動きを対象にした設定 |
| 4: Failed BO | 1,473件 | ブレイク失敗後の戻りを扱う設定 |
| 5: NY ORB | 541件 | NY序盤の値動きを対象にした設定 |
以下は6設定ごとの年別PF一覧です。表示用PFは2桁、非丸め値のPFです。
Tokyo ORB (current)
東京序盤のレンジブレイクを基本にした現行設定
PF(表示)が1.00未満の年は赤寄りで表示しています。
| 年 | 取引数 | PF(表示) | PF(非丸め値) |
|---|---|---|---|
| 2015 | 162 | 1.19 | 1.193838 |
| 2016 | 174 | 1.39 | 1.392821 |
| 2017 | 153 | 0.90 | 0.895817 |
| 2018 | 142 | 1.20 | 1.203193 |
| 2019 | 106 | 0.84 | 0.837863 |
| 2020 | 118 | 1.32 | 1.319289 |
| 2021 | 88 | 0.90 | 0.901373 |
| 2022 | 179 | 1.30 | 1.303092 |
| 2023 | 175 | 0.95 | 0.953904 |
| 2024 | 157 | 1.61 | 1.605214 |
| 2025 | 171 | 1.50 | 1.501600 |
1: 2nd Entry
初回の動きのあとに再進入も評価する派生設定
PF(表示)が1.00未満の年は赤寄りで表示しています。
| 年 | 取引数 | PF(表示) | PF(非丸め値) |
|---|---|---|---|
| 2015 | 64 | 1.05 | 1.045299 |
| 2016 | 77 | 0.87 | 0.871460 |
| 2017 | 67 | 0.77 | 0.771382 |
| 2018 | 53 | 1.07 | 1.068392 |
| 2019 | 42 | 0.71 | 0.705710 |
| 2020 | 50 | 1.45 | 1.452055 |
| 2021 | 31 | 0.74 | 0.743333 |
| 2022 | 76 | 1.97 | 1.974555 |
| 2023 | 75 | 1.42 | 1.415818 |
| 2024 | 66 | 2.07 | 2.073247 |
| 2025 | 94 | 1.12 | 1.121053 |
2: Tokyo Late
東京時間の遅い時間帯まで見る派生設定
PF(表示)が1.00未満の年は赤寄りで表示しています。
| 年 | 取引数 | PF(表示) | PF(非丸め値) |
|---|---|---|---|
| 2015 | 103 | 0.87 | 0.869842 |
| 2016 | 90 | 1.08 | 1.078140 |
| 2017 | 76 | 0.80 | 0.797468 |
| 2018 | 91 | 1.10 | 1.101413 |
| 2019 | 87 | 0.86 | 0.856255 |
| 2020 | 80 | 1.14 | 1.144837 |
| 2021 | 77 | 0.61 | 0.606834 |
| 2022 | 76 | 0.63 | 0.632092 |
| 2023 | 92 | 0.63 | 0.632116 |
| 2024 | 90 | 0.86 | 0.857101 |
| 2025 | 83 | 1.62 | 1.620185 |
3: London ORB
ロンドン序盤の値動きを対象にした設定
PF(表示)が1.00未満の年は赤寄りで表示しています。
| 年 | 取引数 | PF(表示) | PF(非丸め値) |
|---|---|---|---|
| 2015 | 58 | 0.42 | 0.421076 |
| 2016 | 39 | 1.27 | 1.267692 |
| 2017 | 47 | 1.49 | 1.485129 |
| 2018 | 45 | 0.45 | 0.450032 |
| 2019 | 36 | 0.45 | 0.450728 |
| 2020 | 50 | 1.48 | 1.483045 |
| 2021 | 49 | 0.86 | 0.863636 |
| 2022 | 54 | 1.35 | 1.354593 |
| 2023 | 52 | 1.46 | 1.458040 |
| 2024 | 62 | 0.90 | 0.895959 |
| 2025 | 48 | 0.68 | 0.684390 |
4: Failed BO
ブレイク失敗後の戻りを扱う設定
PF(表示)が1.00未満の年は赤寄りで表示しています。
| 年 | 取引数 | PF(表示) | PF(非丸め値) |
|---|---|---|---|
| 2015 | 140 | 0.81 | 0.809163 |
| 2016 | 170 | 0.90 | 0.904374 |
| 2017 | 137 | 0.73 | 0.725429 |
| 2018 | 119 | 1.07 | 1.072299 |
| 2019 | 83 | 1.01 | 1.009088 |
| 2020 | 93 | 1.01 | 1.006892 |
| 2021 | 69 | 1.02 | 1.019500 |
| 2022 | 156 | 0.86 | 0.864638 |
| 2023 | 173 | 0.85 | 0.852317 |
| 2024 | 165 | 0.88 | 0.875175 |
| 2025 | 168 | 0.72 | 0.720809 |
5: NY ORB
NY序盤の値動きを対象にした設定
PF(表示)が1.00未満の年は赤寄りで表示しています。
| 年 | 取引数 | PF(表示) | PF(非丸め値) |
|---|---|---|---|
| 2015 | 54 | 0.68 | 0.675062 |
| 2016 | 53 | 1.37 | 1.365150 |
| 2017 | 54 | 0.95 | 0.952273 |
| 2018 | 38 | 1.28 | 1.282710 |
| 2019 | 34 | 1.21 | 1.209888 |
| 2020 | 38 | 0.41 | 0.412483 |
| 2021 | 45 | 1.30 | 1.300515 |
| 2022 | 50 | 0.26 | 0.263043 |
| 2023 | 70 | 1.65 | 1.646400 |
| 2024 | 56 | 1.22 | 1.223239 |
| 2025 | 49 | 1.78 | 1.778726 |
7. この検証結果を見るときの注意点
- これは「年別PFがどう散らばるか」を見る検証で、将来の利益を保証するものではありません。
- 固定0.5pipsは反映していますが、変動スプレッド、滑り、手数料、約定拒否は再現していません。
- 6設定の細かな売買条件を比較する記事ではなく、年別分布の読み方に焦点を当てています。
- 66は暦年ではなく、6設定×11年の観測値です。
8. FAQ
Q. 全期間PFが良ければ、その戦略は安定していると言えますか?
A. 言い切れません。今回は66戦略年のPFを並べると0.263043〜2.073247まで広く動き、32件はPF1.0未満でした。全期間PFが良くても、年別に切ると苦しい年が複数含まれる場合があります。
Q. 66戦略年とは何ですか?
A. 同じ11年間を6種類の設定で評価したため、年別PFの観測値が66件あるという意味です。相場データが66年間あるという意味ではありません。
Q. 32/66は何を表していますか?
A. 66戦略年のうち、PFが1.0未満だった件数です。利益合計より損失合計の方が大きかった年が32件あった、という読み方になります。
Q. このPFは実運用でもそのまま出ますか?
A. そのままではありません。固定0.5pipsを約定価格へ反映していますが、変動スプレッド、滑り、手数料、約定拒否は再現していません。
9. まとめ|全期間PFだけで安定性を判断しない
今回の66戦略年では、年別PFが表示値で0.26〜2.07まで動き、32/66はPF1.0未満でした。全期間PFが良くても、毎年同じように勝てるとは限りません。
バックテストを見るときは、まず全期間PFで全体像をつかみ、そのあと年別PFで「どこで崩れるか」を確認する。この順番にすると、数字の見え方はかなり変わります。
たくや
次からは合計のPFだけでなく、負ける年の混ざり方まで見てから判断します。
みか
良い数字に飛びつくより、苦しい年の姿を先に知るほうが安心ですね。
るなまる
その視点があるだけで、バックテストの読み違いはかなり減らせます。
このシリーズの他の記事は、統計トレード攻略ガイドでまとめています。
この結果をバックテストの見直し方に使う
今回の結果を見ると、PFは年ごとにかなり変わりうる数字です。直近だけ、あるいは全期間の平均だけで判断せず、複数年でどのくらいブレるかを前提に見ておくほうが、手法やEAの見え方を整理しやすくなります。
次に確認するなら、期間を分けたあとでも傾向が残るかを見るOOS検証が自然です。年別のブレを見たあとに、別期間で確認する流れをつなげたい人は、OOS検証の記事を続けて見ると整理しやすくなります。
10. るなまるの検証メモ
年別PFは、USDJPYのM5データを使い、6設定を11年に分けた66件の観測値で集計しました。PFは固定0.5pipsを約定価格へ反映した損益から算出しています。
ここでいう「66戦略年」は66暦年ではなく、「6設定×11年」の66件の観測値です。全期間のPFが良く見えても、年ごとに分けるとPF1.0未満の年が混ざるため、合計値だけで安定性を判断しないための検証です。
